【神山川堤防】桜保存へ工事区間を短縮

宮城県気仙沼土木事務所は8月31日、神山川の桜並木に関する説明会を開きました。桜並木保存のための堤防計画見直しを求めた署名活動を受けて、工事区間を100m程度短縮し、一部の桜を保存する方針を示しました。工事区間は、来年2月に国土地理院が公表する最新の地盤変動量を見てから最終判断します。今のところ、50本の桜のうち5本程度が残る見込みです。

■4712人の署名を「重く受け止める」

神山川の堤防工事や署名活動の詳細は気仙沼復興レポート26や要望時のブログ記事をご覧ください。要約すると、今年3月の地元説明会で堤防工事に一度は合意したものの、桜を少しでも残すために4712人の署名を集めて見直しを求めていました。この署名は堤防そのものに反対するものではなく、津波に対する安全を確保した上で、コンクリート3面張りの工法を見直したり、工事区間を短縮したりすることを求めました。

要望から3カ月半後に開かれた説明会には住民ら約30人が集まりました。県は「多くの人が署名した思いを重く受け止め、安全第一にどう配慮できるか検討した」と、3つの検討案を示しました。いずれも堤防の計画高は海抜3.7mを維持したままでの変更案です。

IMG_5089

■3つの検討結果を説明

検討案①は、桜を残して盛り土をする方法ですが、根が窒息死して桜が枯れるだけでなく、天端をコンクリートで覆えないため、越流した津波や洪水で堤体が洗掘されて決壊する恐れがあり、県は「不採用」と判断しました。

img268

検討案②は、桜を残すように矢板護岸を施工する方法ですが、矢板の施工に桜の枝や根が支障になりますので「不採用」です。

img268_001

■地盤隆起分を反映。100m短縮で残る桜は5本程度

県が採用したのは検討案③です。地震で沈下した地盤は、震災から5年が経ち、気仙沼小学校の電子基準点で間で累計25㎝の隆起が確認されています。詳しくは気仙沼復興レポート28にありますが、県は最新の隆起分を堤防高に反映させることにしました。神山川の場合、25㎝の隆起によって約100mの工事区間を縮減することができます。

下の図は、神山川の左岸堤防の高さをあらわしています(左側が下流、右側が上流)。地盤が25㎝隆起していれば、海抜3.7mの堤防高は約100m短い地点で現堤防に達するため、この区間の堤防工事が不要になることを示しています。ピンク色の点は桜の場所です。「さかなの駅」の手前まで100mの短縮だと5本程度の桜しか残りませんが、25㎝以上の隆起ならさらに桜が保存できることが分かります。県としては特別な工法は認められないけど、地盤隆起分の反映なら安全面での問題がないために受け入れたということでしょう。

3

■国土地理院の公表待って工事区間を判断

隆起分を反映させた水準点の高さは、国土地理院が来年2月に公表します。この公表を受け、神山川の工事区間を判断します。現計画の工事区間は神山橋から条南中学校前までの575mでしたが、100m縮減できれば、桜は5本程度残すことができます。25㎝以上の隆起なら、5本以上の桜が残るのです。なお、工事区間の短縮は左岸だけでなく右岸にも適用されます、もしも両岸合わせて200m縮減されると、工事費も2億円程度抑制することができます。

■桜伐採を延期。来年も花見が可能

計画では10月から桜並木をすべて伐採する予定でしたが、工事区間を確定するまで先送りします。来年2月の水準点の高さの公表を受けて、3月に工事範囲を説明し、6月から桜を伐採します。今年が最後とされていた花見は、来年もできることになりました。ただし、平成30年6月に予定していた堤防の完成は、31年2月ごろに遅れてしまいます。

img270

説明会では、署名活動を行った「神山川の桜並木を望む市民の会」の川崎幸雄代表が、県の検討案③について「5本程度が7本か10本に増えることを期待して県の説明に同意したい」と表明。地区住民からは「堤防をもっと高くしてほしい」「堤防をもっと上流まで整備した方がいいのではないか」「津波だけでなく洪水も心配。早く堤防を整備してほしい」という意見が続出しましたが、県の案で進めることに同意しました。

■「桜も大切だが命が最優先」

地元外から堤防計画の抜本的な見直しを求める意見もありました。しかし、「桜も大切だが、住民の命が最優先」と地元住民が理解を求めました。地元住民が続けてきた桜の剪定、周辺の草苅作業について、市民がもっと協力していきたいという提案もありました。

説明会を総括すると、工事が遅れるほど不安になる住民がおり、桜並木のためにこれ以上の時間をかけることは難しいと考えさせる雰囲気でした。こうした状況が懸念されたため、署名活動は「津波に対する安全を保つことを前提にした計画見直し」を求めたのでした。やはり、こうした説明会には中立的な立場で話し合いを調整できるファシリテーターの存在が必要です。

なお、来年3月の説明会では、県から修景についても提案がある予定です。地盤隆起がどの程度で何本の桜が残せるかは分かりませんが、まずは来年2月の国土地理院の発表を待ちたいと思います。

IMG_4437

最後になりますが、署名に協力してくれた皆さんにあらためて御礼を申し上げます。5本程度といわず、もっとたくさんの桜の保存を期待された方が多いとは思いますが、工事の遅れが不安だという住民もいる以上、限界があることも事実です。少しでも桜が残るように調整を続けていきますので、ご理解をお願いいたします。

 

 

 

Leave a Comment

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

*