地域一丸で砂浜を守った。大谷海水浴場の防潮堤計画見直し

防潮堤問題で注目されてきた気仙沼市本吉町の大谷海水浴場。行政が当初示した計画は砂浜を潰して防潮堤をつくる内容でしたが、砂浜を残す計画に変更されました。住民が諦めずに活動を続けた成果です。

最初に、大谷の防潮堤のポイントをまとめておきます。

・治山施設から建設海岸へ所管替えしたことで防災林の復旧が不要になった

・鉄路復旧の断念によってJR気仙沼線跡地も防潮堤にできた

・住民が求めていた国道45号のかさ上げが認められた

・国道かさ上げによって必要になる背後地のかさ上げは気仙沼市が行うことにした

・かさ上げした背後地に道の駅「大谷海岸」を移設。広場も用意する

・県北で初めて防潮堤にCSG工法の導入を検討する

・計画見直しのため、地域が署名活動を行い、住民組織で代替案を検討した

・気仙沼市が住民の要望を積極的に支持。リーダーシップをとって国と県を動かした

■説明会で地元合意

大谷海水浴場の堤防高は海抜9.8m。7月30日の地元説明会で合意した計画は、震災前と同規模の砂浜を残すために防潮堤をセットバックし、国道45号をかさ上げして兼用堤としました。完成後は下のイメージ図のようになります。

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国道をかさ上げすると、沿道の土地がくぼ地になってしまうため、気仙沼市が盛り土します。盛り土するエリアは計3.9ha。道の駅、駐車場、BRT駅を配置する「観光交流ゾーン」、民間利用、コミュニティ広場のための「地域交流ゾーン」に分けました。災害時には、自衛隊や消防の活動拠点、がれき置き場などとして活用することを想定しています。

■砂浜は震災前の面積確保

地盤沈下などによって後退した砂浜は、防潮堤をセットバックすることで震災前と同じ2.8haを確保しました。防潮堤は勾配の緩やかな緩傾斜堤と、CSG工法の2タイプを組み合わせを検討します。CSG工法は砂礫とセメントを混ぜた堤体とする工法で、砂浜を広く確保することができます。この組み合わせだと、養浜(砂を運び入れる作業)をしなくても大丈夫なのだそうです。

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大谷海水浴場の防潮堤は、防災林を守るために林野庁が管轄する「治山施設」でした。このため、防災林を残すために砂浜を潰してでも海側に復旧する必要がありました。建設海岸として宮城県の所管に変更することで、大幅にセットバックすることが可能になりましたが、背後地の防災林は復旧しません。

■国道45号をかさ上げして兼用堤に

防災林をなくしてセットバックする案は以前から示されていたのですが、すぐ背後に気仙沼線と国道45号があったため、セットバックには限界がありました。それでも住民は国道45号をかさ上げし、国道から海が見えるようにすることを諦めずに求め続けてきました。

次の図の上側が林野庁が平成24年7月に説明した防潮堤の位置、図の下側がJRと国道をそのままにした場合の宮城県の提案でした。今回認められた計画は、県の提案よりさらにセットバックしました。

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今年3月に気仙沼線の鉄路復旧を断念し、線路跡をバスが走るBRTで本復旧することが決まったことで、困難とされていた住民の要望が一気に現実味を帯びました。JRはこの地区では線路跡を専用道化せずに、BRTバスは国道を走らせる方針を示したことで、線路跡を残す必要がなくなったのです。

国道のかさ上げには、工事中に代替路が必要になる課題もありました。仮設の国道を内陸側に用意することで解決しましたが、再建した事業所への影響をできるだけ避けるようにルートを検討していきます。

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■背後地3.9haを気仙沼市がかさ上げ

国道を高くすると、道路沿いの土地がくぼ地になってしまいます。国は民有地のかさ上げは「個人の資産形成につながる」と復興予算での対応に難色を示していましたが、公有地として買い上げることでかさ上げを可能にしました。防潮堤と同じ高さまでかさ上げします。

背後地のかさ上げが最も難しい課題でした。すでに飲食店やコンビニ、作業員用の宿泊所などが建設されていて、かさ上げには移転補償も必要になるからです。市は復興交付金の効果促進事業を活用できるように国と調整しています。

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■防潮堤の完成は平成32年度

防潮堤や国道かさ上げのための調査設計を進め、用地補償の後、国道の切り回し工事に着手。31年度末ごろに道の駅が移転オープンし、32年度には防潮堤も完成する予定です。

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林野庁が東側に整備する防潮堤の工事も同時に進められます。こちらもセットバックしていますが、砂丘を崩して整備することになるため、計画の見直しを求める意見もあります。

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なお、西側に「はまなす海洋館」側の防潮堤計画は調整中で、まだ合意に至っていません。地元は原形復旧を求め、県と市が協議しています。ちなみに、市の災害危険区域は原形復旧を前提とした津波シミュレーションで決まっています。

■署名活動、住民組織で計画見直しを実現

大谷海水浴場は県内有数の海水浴場です。その海水浴場を守るため、計画の一旦停止と住民意見の反映を求める署名活動が平成24年夏に行われ、1324人の署名を気仙沼市長に提出しました。若手を中心にした大谷まちづくり勉強会を立ち上げ、さらに大谷里海づくり検討委員会で具体案を検討しました。住民の要望をイラストにまとめ、アンケートも実施するなど、住民が一丸となって行政を動かしてきました。

菅原茂市長も当初から「海水浴場は守るべき」との姿勢を示し、国や県との交渉に挑んできました。市内には4つの海水浴場があり、お伊勢浜も防潮堤を100mセットバックし、小田の浜は原形復旧にすることが決まっています。小泉も砂浜が戻ると説明されています。

大谷海水浴場の近くには三陸道のインターができます。海水浴場は夏だけでなく、海辺の散策などにもオールシーズン人気です。新しくなる道の駅、コミュニティ広場などとともに、たくさんの人が集まる場所になってほしいものです。

なお、大谷地区の基幹農道(市道岩尻縦貫線)の改良も計画しています。現道を拡幅することは難しいので、西側に新たなルートを整備して大谷小学校付近で接続させます。

160801_1702_001_page009■未合意は107カ所のうち5カ所

これで市内で計画が固まっていない防潮堤は、宮城県が管理する大谷海岸(はまなす海洋館前)、日門漁港、気仙沼漁港の港町と魚市場前、気仙沼市管理の長崎漁港の5カ所となりました。このほか102カ所は合意を得て計画が進んでいます。

 

1 Comment

  1. 復興事業が終われば工事関係車両は減るし、三陸道が完成すれば通過車両はそちらを行くだろうから、専用道が無くてもBRTは定時運行できるのかもしれないけれど、専用道も含めた兼用堤であって欲しかったような…、大谷の前後区間は45号線の海側だった線路跡専用道なのだし、ちょっと残念に思います。
    これ以上、大谷の皆さんを待たせるわけにはいかないでしょうから、レバタラ話はこれにてチャックにします。

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