下水道整備構想を大幅見直し【気仙沼市】

国の指針をもとに見直した宮城県生活排水処理基本構想が公表されました。県内各市町村の今後の下水道整備方針が記載されています。気仙沼市の下水道事業も現実的な構想に見直し、整備区域を大幅に縮小しました。その理由と影響を解説します。

■いまのペースだと整備完了まで116年。下水道普及率は県内最低

平成22年に策定した県構想では、気仙沼市は都市計画の用途地域1558ヘクタールを主体に公共下水道を整備する計画でした。将来的には四反田や東新城、館山、鹿折の東中才や東海岸、面瀬の下沢地区、新月の松川地区まで下水道整備をする考えだったのです。

公共下水道のほかに、茗荷沢や高谷など16カ所への集落排水施設も計画していました。いまのままペースでは、すべて整備するのに116年もかかります。下水道普及率は県全体で79%なのに、気仙沼市は14%と最低で、完成に要する時間もダントツの1位でした。なお、南三陸町は志津川地区に整備していた公共下水道を震災後に廃止しています。

新規 Microsoft PowerPoint Presentation

■現実的な構想へ区域縮小

新たな構想は、国が作成したマニュアルをもとに策定することが指示されました。公共下水道などの集合処理と、合併浄化槽などによる個別処理について、維持管理費も含めて効果を検証し、人口減少の予測も反映させました。概ね10年以内に整備できる現実的な構想も求められました。

検討の結果、気仙沼市は事業着手中の公共下水道区域に田中前と上田中の約50ヘクタールを加えるだけにしました。計画にあった13カ所の集落排水施設は消えてしまいました。茗荷沢と高谷の集落排水施設は残すことも検討しましたが、経済比較で個別処理の方がいいと判断しました。なお、神山川右岸の防災集団移転団地、新しい市立病院には復興予算を活用して下水道を整備します。

■これからは「維持管理の時代」

「概ね10年の計画なのだから、将来的には拡大していくだろう」と思うかもしれませんが、新たな人口密集地が形成されない限り現実はとても厳しいです。20年後を見据えた長期的な構想には下水道整備の計画はありません。今後は「維持管理の時代」で、老朽化した施設の改修や更新も必要になってきます。なお、新たな県構想を踏まえて、気仙沼市の下水道事業計画を見直します。

■普及率最低の理由

気仙沼市の下水道普及率が極端に低いのは、まとまった平地が少なく、集落が点在しているためです。市単独での公共下水道というハンデもあります。阿武隈川や北上川など大きな河川の流域では、県による下水道事業が行われていて、多賀城市や利府町など20市町村では県に100%任せているのです。単独下水道のみの市町村は、気仙沼市など9市町だけなのです。

普及率が低い分、ほかの市町村で問題となっている下水道事業の借金は比較的少ないそうです。

家庭は浄化槽を設置すればいいのですが、事業所にとって下水道の有無は大きな問題です。用途地域の土地と建物に課かっている都市計画税も、最近は下水道事業の償還に充てられることが多く、事業区域の見直しによって課税範囲も検討する必要があります。

下の資料は10年後の各市町の生活排水処理普及率です。気仙沼市は下水道と集落排水で21.1%、合併処理浄化槽で39.4%で計60.5%になります。県内最低のままです。普及率で色分けした地図を見ても、気仙沼市の低さは際立っています。

362682_page038

362682_page032

 

Leave a Comment

Your email address will not be published. Required fields are marked *

CAPTCHA


*