地盤隆起と水準点変更。堤防高への反映は?

国土地理院は5月31日、東北地方太平洋沿岸で水準点を見直すことを発表しました。東日本大震災による地殻変動で、気仙沼市では65~74㎝の地盤沈下が確認され、水準点の高さも引き下げていましたが、その後は隆起が続いているため、あめためて正確な高さを測量します。堤防高への反映が見込まれています。

■2011年10月に引き下げて以来の見直し

土地の高さを求めるために必要な水準点は、主要地方道に沿って約2㎞ごとに設置しています。気仙沼市内には国道45号、主要地方道沿いに22の水準点があります。下の写真は神山橋のたもとにある水準点です。

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津波対策のための復旧・復興事業では土地の高さはとても重要です。防潮堤や河川堤防をはじめ、宅地の盛土高も海抜(標高)で計算しています。この高さは近くの水準点を基本にして測量しているのです。

しかし、震災による地盤沈下で水準点が実際により低くなってしまったため、国土地理院は震災7カ月後の2011年10月に高さを改定しました。気仙沼市の場合、気仙沼小にある電子基準点で69㎝の沈下を確認しており、水準点の高さも下げられました。例えば神山橋のたもとの水準点は、震災前の地図(2003年発行)で海抜4.1mでしたが、現在は3.3mに変更されています。

2011年夏の水準点の測量成果

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国土地理院によると、水準点を一つずつ測量し直すそうです。測量は7~11月に実施し、来年2月末に新しい水準点の成果が公表されます。

■気仙沼小は5年間で25㎝の隆起

気仙沼小の電子基準点は震災で65㎝沈下したものの、1年後には7㎝、2年後にはさらに6㎝、3年後にはさらに5㎝、4年後にもさらに5㎝、5年後にはさらに4㎝、累計で25㎝も隆起しました。東北沿岸の水準点についても、国土地理院は「人工衛星からの観測で、2016年3月の時点で30㎝以上も乖離している地域があることを確認している」と説明しています。

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図は震災直後の地盤沈下量

河北新報の記事(2016年5月27日)では、国土交通省と農林水産省が新しい水準点に基づいて防潮堤の高さを見直すように求める方針でいることが報道されています。着工済みの防潮堤については変更による工期や費用への影響などを踏まえて見直しの是非を判断するというのです。

■影響は堤防高だけなのか

気仙沼市の場合、魚町地区の防潮堤(海抜4.1m+フラップゲート1m)で隆起分の反映を求めているほか、神山川の堤防でも桜保存のための見直しが要望されています。もしも水準点が25㎝下がれば、魚町の陸側から見た堤防高は1.30mから1.05mになります。神山川では何本かの桜を保存できるのです。レベル1津波対応の防潮堤は高すぎて25㎝の変更はあまり意味がないところが多いのですが、1mほどのかさ上げにとどまる原形復旧の防潮堤では大きな変更になります。

防潮堤が注目されていますが、沿岸の地盤かさ上げへの反映については情報がまだありません。水準点の変更を防潮堤だけでなく宅地のかさ上げ高にも反映されると、魚町の見た目の堤防高は変わりません。さらに水準点の変更は、災害危険区域を設定するための津波シミュレーションにも影響する可能性があります。海抜が高くなれば、津波の到達地点も変わります。10㎝程度の浸水想定で災害危険区域に指定されたエリアもあり、水準点の変更を地盤高に反映させると、災害危険区域は縮小することになるのです。今後、測量の成果とともにしっかり注目していきたいです。

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