なぜ岸壁は高くなったのか。

東日本大震災で被災した気仙沼市内の漁港で、災害復旧工事が進んでいます。岸壁部分はほぼ完成しましたが、海から高すぎて船への乗り降りが大変になってしまいました。
IMG_0348災害復旧は震災前の状態に戻すことが基本です。岸壁も地盤沈下した分を60~70㎝程度、コンクリートでかさ上げして復旧しました。なのに、多くの漁港で「震災前より30㎝ほど高くなった」という話を聞きます。
船にとって30㎝の違いは大変です。気仙沼地域は干満潮の差が2m以上あり、満潮時には船から乗り降りしやすくても、干潮時にはハシゴがなければ岸壁に上がれません。漁具や魚、発電機などを陸に上げるのも大変で、満潮時間を待って陸揚げしているそうです。
震災前よりも岸壁が高くなった理由は二つ考えられます。まずは、地盤が戻ってきているという事実です。震災で70~100㎝ほど沈下しましたが、電子基準点で10~15㎝ほど震災直後より高くなっています。専門家によると、地盤沈下というのは一部地域の現象であり、今回のように山の高さまで下がるのは「地殻変動」というそうです。地殻変動はプレートの動きによるので、やがて戻ってきます。3年で15㎝だと、これからさらに高くなる可能性があるのです。
もう一つの理由は、災害復旧のもととなる図面と、震災直前の岸壁との差異だと考えられます。図面は建設時のものですが、何十年も経って地盤沈下していたはずです。建設時の状態に戻せば、漁業者から高くなったと思われてしまいます。
理由は何にしても、岸壁工事は終了しています。今後はハシゴを増やしたり、陸揚げ用のクレーンを設置(漁協主体)したり、浮桟橋を用意したりという対策が必要です。特に海中転落に備えたハシゴの設置は急務です。
IMG_0360実は、岸壁の復旧が早かった場所ほど、この問題が深刻です。あとから始まった場所では、前例を活かして岸壁の高さを利用者と協議して決めています。階段状にすることで、潮位の変化に対応している漁港もあります。
原形復旧の問題は、防潮堤工事にも共通しています。
震災前の高さにかさ上げした結果、周囲は沈下したままなので、実際はかさ上げした分が高くなって見えるのです。だいたい1mほど高くなっているので、震災前に見えていた海が見えなくなってしまった場所もあります。
気仙沼市内では防潮堤の約3割が原形復旧になります。被害がほとんどなかった防潮堤から工事に入っているのは、用地買収が不要で工事に入りやすいからですが、資材が人手が不足している中、高潮などに影響しない場所は急ぐ必要があるとは思えません。DSC_8416写真は大島の長崎漁港(小田の浜海水浴場隣り)ですが、原形復旧したことで海が見えなくなり、海水浴場からの景観まで悪くなってしまいました。住民は「余計なことはしないで必要なところを急いでほしい」とあきれ顔でした。原形復旧という言葉に惑わされず、ちゃんとチェックしていかなければなりません。

3 Comments

  1. 掛水 武

    まだ試験段階設置段階ですが、当社では岸壁、防波堤の安全設備を勧めています。
    場違いなのかもしれませんが、参考までにご覧になってください。
    出来れば、感想、助言等をお聞かせいただければ嬉しく思います。
    YOUTUBEに動画がありますので、どのような物か分って頂けると思います。
    https://youtu.be/ZZn6nNyrzKY
    https://youtu.be/G94EuDNZAdw

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    1. 今川 悟 (Post author)

      拝見しました。効果的だと思います。常設した場合の維持・管理が大変そうなイメージを持ちましたが、こうしたアイデアが大切だと思います。

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      1. 掛水 武

        貴重な意見、コメントありがとうございます。
        試験設置した物は、初期型は暴風、波浪、貝類の付着により破損してしまいましたが、現行型は改善の余地はあるものの、現在のところ良好をです。
        改良型を設置して、ちょうど一年になります。
        目標は、年一回の定期点検のみのメンテナンスフリーなので、当初目標はおおむねクリアしたと思っていますが、港湾の特色、環境によって色々考慮しなければならないと思っています。
        これからも、体にお気をつけて頑張ってください。

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