「モデルになる防潮堤」。未来へ大島の決断

気仙沼市の大島にある浦の浜(うらのはま)漁港。ここで宮城県が計画している防潮堤は、当初は地域から猛反発を受けましたが、最後の説明会は住民が「モデルになる計画」と拍手するほど納得して終わりました。

浦の浜の防潮堤は基本的に同意したことについて2015年12月のブログで紹介しましたが、その後も地域と行政で調整が続けられてきました。防潮堤の背後地に整備する大島ウエルカムターミナルの構想も固まってきたことから、今月18日に再び説明会(住民25人出席)が開かれました。

【緑の真珠。コンクリートが見えない防潮堤に】

前回の計画との大きな変更点は、南側の直立堤をやめて必要な部分にだけ整備することで、防潮堤の総延長は540mに短縮しました。傾斜堤には覆土して緑化するため、これでコンクリート壁がむき出しになる部分はほとんどなくなりました。「緑の真珠」と称される大島にふさわしい計画になりました。

なお、この変更に合わせて2本の道路も整理することができました。防潮堤前面の公園もまとまった面積を確保しました。防潮堤整備のために移転補償する建物もあります。

車の出入りのために陸閘(ゲート)が設置されることで分断されていた場所には、人道橋を設置して高台への避難道を確保しました。高齢者から要望があった防潮堤へのスロープ設置は、延長が90mになるため実現が難しく、環境整備事業で防潮堤前面に計画している公園への整備を検討していくことにしました。

※下の図面が前回までの計画と要望事項、その次の図面が変更箇所です。

【努力してくれてありがとう】

変更計画に対して、住民は「(2018年度末に予定している)架橋に間に合うか心配。用地買収を早く進めてほしい」「こんな防潮堤は他にはない。モデルになる。努力して頂きありがとう」と感謝した。険悪な雰囲気だった当初の説明会を思うと、同じ地区と思えない雰囲気でした。そして、知恵を出し合うことで、よりよい計画とできることを実証して見せたのです。

※次の図は前回までの計画、その下の図面が変更後の計画です。道路がすっきりして、防潮堤の壁面が緑化されています。

【完成は平成31年度末】

総事業費は防潮堤で約20億円、覆土などの環境整備で約6億円。地域の合意を受けて測量・設計に入り、用地買収を進めます。工事は付替道路の整備と南側防潮堤の整備から始め、すべて完成するのは32年3月の予定です。大島ウエルカムターミナルがの部分は、橋の開通に間に合うように優先して整備します。

【浦の浜のこらからを考える会の思い】

浦の浜の事例は、住民の粘り強い交渉、行政の柔軟な対応によって生まれましたが、それぞれの海岸で条件(背後地の活用計画、防潮堤の位置を変更するための面積など)が異なるため、同じことができるわけではありません。

共通して参考にできるのは、住民の動きです。行政の説明を聞くだけで判断するのではなく、自分たちで調べ、議論してきました。署名活動、さまざまな要望もその成果なのです。堤防高を決めた津波シミュレーションへの疑問も残っていましたが、たくさんの支援を受けて復興する大島を次世代へつなぐため、未来志向での議論を決意したのです。

防潮堤不要論もある中で、あえて防潮堤を受け入れて最良の選択を探したのです。まさしく苦渋の決断です。その中心となったのは「浦の浜のこれからを考える会」でした。動きがあるごとに会報まで発行しています。最新の会報にその思いがまとめられていますので、最後に紹介します。

 

 

Leave a Comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


*