常滑と加古川の新病院計画から学ぶ【視察報告】

気仙沼市議会には市立病院建設事業調査特別委員会があります。29年完成予定の新病院に生かすため、この委員会で1月21~23日に行政視察を行いました。視察したのは愛知県常滑市と兵庫県加古川市。視察から学んだことを報告します。

【常滑はセントレア空港の近くに】
常滑市は中部国際空港「セントレア」が立地し、焼き物で栄えてきたまちです。現在の市民病院が老朽化したため、今年5月の開院を目指して新病院を建設しています。

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※写真は老朽化した市民病院です。

一般会計から毎年5~9億円を繰り入れるほどの慢性的な赤字経営でしたが、市内唯一の病院を維持するため、経営改善に取り組みながら新病院建設を目指してきました。市内の救急搬送の9割を受け入れているところも気仙沼市立病院に似ています。

未収金回収、経費節減に合わせて、患者数が増加し、20年度にマイナス8億円だった経常損益が25年度にはマイナス1億円まで減りました。事務局職員のプロパー化、地方公営企業法の全部適用、経営管理室の設置、土・日曜日は休んでいたリハビリの365日化、経験年数で算定していた医師の診療手当の配分基準見直しも効果があったそうです。

【100人会議で構想づくり】
新病院へ向けた取り組みで注目したいのは、市民を交えた100人会議で基本構想づくりを進めたことでしょう。メンバーは医療スタッフ、行政マン、市民の計111人ですが、市民委員91人のうち64人は無作為抽出で選びました。

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無作為抽出とは市がランダムで選んだ市民に委員就任を要請する仕組みで、市民参加を促すとともに、いつも同じメンバーになりがちな会議にさまざまな市民の意見を反映させることができます。西日本では導入している自治体が多く、これからさらに注目される仕組みだと思います。

常滑市の場合、1000人に案内を出して64人が承諾しました。この64人の会議出席率は61%と、公募委員の80%より低かったのですが、別な効果がありました。新病院で導入する市民ボランティア(院内案内や車いす介助など)を募集したところ、無作為で依頼した市民委員が手を挙げたのでした。ボランティアは開院を前に50人近く集まっているそうです。実情をちゃんと知れば、市民は行動してくれるのです。院内にはボランティア室を用意します。

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※病院は新興住宅地に建設中。病院進出が決まってから地価が高騰したという。

 

【加古川は独立行政法人化】
28年秋の開院を目指している新たな加古川市民病院は、加古川西市民病院と加古川東市民病院を統合して新設します。新病院開設に向け、二つの市民病院を地方独立行政法人加古川市民病院機構が、市から独立して経営しています。

発端は加古川市民病院(現・西市民病院)の危機でした。医師は神戸大学の医局人事に頼っていたのですが、研修医制度の改革によって確保が難しくなり、17年に14人いた常勤内科医が21年に1人まで減ってしまいました。神戸大からの指導もあり、近くにあった神戸製鋼の病院を市民病院にした上で、二つの市民病院の経営を独立行政法人化したのです。

【大学医局が統合を指導】
二つの病院を統合することで、600床規模の大病院となり、医師を集約派遣しやすくしたのです。これまでは、神戸大から医師派遣している病院が地域内に五つもあったのだそうです。民間病院との統合も独立行政法人化も、行政としては非常に選択しにくい道なのですが、神戸大の影響力が困難な壁を壊したようです。現在、常勤内科医は19人まで増えました。

加古川市内には、県立医療センター、民間の大規模病院もあります。市民病院とはいえ、サービス競争にさらされています。それはスタッフの獲得も同じで、「魅力ある病院でなければ医師が希望しない」のです。

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病院は繊維工場跡地に建設中でした。現在ある二つの市民病院の真ん中に位置しています。それぞれの市民病院跡地は、消防署、市民集会所、夜間診療センター、老人福祉施設、防災倉庫の整備を検討しています。

 

【待ち時間対策と食堂】
今回の視察で確認したかったのは、気仙沼でも課題となっている新しい病院の待ち時間対策でした。
常滑は、診察を予約制にして、診察時間が近づいたら携帯電話を鳴らす仕組みを検討していました。
加古川は、診察番号をホームページでも公開し、スマートホンなどで確認できる仕組みを考えていました。いずれも予約制を導入したうえで、いかに待合室での待ち時間を減らすか工夫していました。
また、あまり考えてはいなかったのですが、よく検討した方がいいと思ったのは気仙沼で計画している院内食堂です。
常滑も加古川も「採算が合わない」と新病院内に食堂は入れていません。コンビニなどで十分だと判断したのでした。

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