【質問】災害公営住宅入居者の高齢化が心配です

【2015年5月26日の質問と回答です】

【質問】記事で高齢化率と1人暮らし率を取り上げていますが、この2つの指標は震災を機に悪化しているのでしょうか。
私がこのような疑問をなぜもったかといいますと、被災地では災害公営住宅などの集合住宅が多くつくられていますが、集合住宅は核家族化を進めるソフト、孤独化を進めるソフトになりうるからです。東京のど真ん中にあるかつてのニュータウンが限界集落化しているのも、そういう側面があると何かの本で読みました。

もう1つの質問は「3世代同居」を推進するための施策を教えていただけないでしょうか。
割安住宅地分譲(栗原市)などの子育て世代に対する優遇策、空き家活用を促進すること。色々考えられると思いますが、できれば気仙沼独自と言いますか、どこに施策の比重を置いているかを教えていただけないでしょうか。先生独自のお考えでもかまいません。

私は「集合住宅は、同じような年代収入世帯が集まって、堅密なコミュニティをつくってしまうために、時が経るとそのまま限界集落化してしまう」という視点しか持っていなかったのですが、災害公営住宅ではさらに制度上の問題が加わっているのですね。
先生の「まずは地元」という言葉にも非常に納得しました。自治体が都市のスター建築家を呼んでつくった施設が地元の人が誰も使わない施設になってしまった、というのはよく噂で聞きますから。

そこで、もう1つ質問ですが、古くなった公営住宅では個人のリフォームは許されるのでしょうか。また、そのような視点に立った優遇策は可能でしょうか。
この質問の意図は、日本の特有の住宅事情として、日本の住宅は竣工時に一番価値があり、数年で建物自体の価値はゼロになってしまうという問題が指摘されています。これがコミュニティ固定化による集合住宅の高齢化促進や孤独化問題、はたまた昨今あらゆる所で指摘されている空き家問題につながっていきます。そこで、ある専門家からリフォーム、リノベーションを当たり前にすることで、日本の住宅問題に一石を投じたいという意見が出されていました。
そして、私の正直な感想を言えば、古くなった公営住宅というものにあまりいいイメージがありません。そのため、そのイメージを払しょくするような案はないだろうか、それが問題解決の糸口になりえないか、という私の思いから先の質問させていただきます。

 

【回答】高齢化率と1人暮らし率ですが、震災によって数値的に大きく変化してはいません。震災で亡くなった方の7割が60歳以上だった一方、子育て世代が流出して、高齢化率に反映されていないものと考えられます。つまり、震災による影響は全年齢的に現れていて、人口は全体的に減っているのですが、割合で見ると変化はないということです。

ちなみに、災害公営住宅の入居者予定者の高齢化率は36%、高齢者の単身世帯は20%の見通しですので、市の平均よりやや高い程度にとどまっています。ただし、月日が経つにつれて、市の平均より高くなっていくことが容易に予想できます。公営住宅は家賃算定ルールの性質上、「実家機能」が持ちにくく、子供が大きくなると同居しにくい制度になっています。

気仙沼市として三世代同居を推進する施策はまだありませんが、将来的には災害公営住宅の空き室を子育て世代へ安価で貸し出していく選択肢はありそうです。菅原茂市長は「東京や仙台を目指さず、気仙沼らしさを探したい」と話しています。地域間競争になるので行政の施策には限界がありますが、地方暮らしの魅力(都会暮らしの問題?)に気づき始めた人たちが、移住しやすい環境づくりは最低限必要です。

個人的には、モデル的な三世代家族の暮らしの情報発信、空き家バンクなどのほか、まずは地元の子育て世代を大切にする取り組みが大切だと思います。観光施設でも、地元の人に愛されない施設は観光客にも人気はありません。子育て応援都市宣言のようにアドバルーンを上げ、田舎らしい暮らしやすさをコツコツと改善していきたいと思っています。

公営住宅の個人リフォームは現行ルールでは認められていません。アパートと同じように、返還するときは元の状態に戻すことが条件になっているからです。裏を返せば、原形復旧できる範囲であれば、申請した上で手を加えられるということになります。

ちなみに、気仙沼市の場合、老朽化した市営住宅から廃止し、災害公営住宅の空き室を活用していく方針です。ただ、古い市営住宅ほど価値が低くなる分、家賃も安くなります。震災がなければ、老朽化した市営住宅を市がリノベーションしていくという方策はありえたと思いますが、実際は補修さえままならない状態でした。本来は低所得者を対象としているセーフティーネットとしての市営住宅ですので、積極的に立派にはできないという制約も実際はあったと思います。

戸建ての災害公営住宅は払い下げが可能ですので、改修を希望する人は買い上げる選択肢もあります。被災された方々は立派な一戸建てに住んでいた人が多いので、自分の手で家を使いやすくしたいという思いが強いようです。

2000戸以上の公営住宅が一斉に老朽化していくわけですから、市としても改修費用の試算は行っていますが、その費用や規模はまだ公表されていません。

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